今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

ドーナツはいかがですか? 〜手作り教材〜

療育で使う教具は、市販のものもありますが、子どもたちの課題は個々で異なりますので、手作りすることがあります。

先日、100円ショップで見つけた「ドーナツバランスゲーム」。ドーナツが崩れないように台に乗せていくという、単純なものですが、珍しく、いいことを思いついたので3セット購入しました。まずは、準備…。f:id:ashikatan:20161103211156j:image

8種類のドーナツを正しい位置に入れたり、カードの上に並べて数対応をしたり、お友達とお店やさんごっこをしたりもできます。

300円のおもちゃも少し手を加えると、視覚認知、微細運動、集中力、数対応、視覚や聴覚の情報処理、社会スキルなどの課題に対応する教具に変身するのです。

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 興味のある方は、ぜひ見学に来てくださいね。

 

 

秋の夜長に思うこと② 〜「障害」は「個性」!?〜

「皆さま、この飛行機はまもなく東京国際空港羽田に着陸いたします。シートベルトを今一度・・・」

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何度、このアナウンスを聞いたかなあと思いつつ、ようやく目を開けます。
飛行機が苦手な私にとって1時間のフライトは苦行以外の何物でもなく、ましてや気流の関係で揺れた日には顔面蒼白・・・。

 出張が続く時期はさすがに辛く、かかりつけ医に相談したこともありました。私についた病名は「加速度病」。単なる乗り物酔いですが、医師曰く、乗り物に酔う人は、生まれつき三半規管が弱く揺れに対するバランスがとりにくい特性をもつので、根本的な治療法はない、酔い止めを飲む、新幹線など他の乗り物を利用する、周囲の理解が得られるなら、出張は誰かに代わってもらうなど、自分なりに工夫してみてくださいとのことでした。
生まれつきの特性、治療法なし、環境調整、周囲の理解、自分なりの工夫・・・、私が飛行機に乗るために必要な対応策は、発達障害の人が生活しやすくするための対応策と全く同じのようです。

障害は「個性」という意見があります。もちろん、人間にそれぞれ個性があることは事実ですが、残念ながらひとり一人の「個性」に合わせてくれるほど、現代社会は優しくありません。
例えば幼稚園は法律上、1学級1担任(場合により副担任を置く)、園児数は1学級35人以下となっています。実際は園の采配で、1クラスの人数は20名前後のことが多いのですが、国の基準では35人までであれば、担任は1人でもよいということになっています。
そのため、その中で生活する子どもには、一定の時間は指定された場所で過ごす、担任の指示に従える、言葉で友達とコミュニケーションをとれるなど、ある程度の社会的スキルが求められます(平岩幹男)。

そのような子どもを理解し、受け入れる社会づくりは大切です。しかし、酔うから揺らすなという要望をJ◯LやAN◯に申し入れても、実現するまでは長い時間がかかるのと同様に、社会はすぐには変われません。

だからこそ、支援センターでは、子どものもつ特性(多動、衝動性、不注意、社会的スキルの不足など)を受けとめつつ、それが生活上の「障害」にならないように、日々、療育支援を続けています。

 

ちなみに私も今では、長年の経験から、「加速度病」の苦痛から逃れるために必要なことは、あらゆるもの(耳栓、アイマスク、薬、ひざかけ、などなど)を駆使して、視覚と聴覚の遮断する、背もたれから離れて揺れの感覚を遮る、睡眠状態を保つということがコツだと知りました。それでも、フライト前には祈ります。

お願い、どうか揺れないで!

 

 

 

 

子どもの「空想」が教えてくれること

当支援センターの療育では、

・語彙を増やす。

・助詞の活用を学ぶ。

・記憶力や推察力を高める。

・登場人物の気持ちを考えることを通して、

   他者の視点を理解する。

ことなどを目的に、昔話カードを使うことがあります。

 

子どもと一緒に絵本を読み、そのテーマに合った童謡を歌い、最後に絵カードをストーリー順に並べさせるという内容で、集中して話を聞く訓練にもなる楽しい課題です。

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ある子どもが私にこんなことを聞きました。

「なんで、かぐやひめは月に帰ったの?」

私が「なんでだと思う?」と聞き返すと、

「あのね、お母さんとお父さんが怒るから!」

 

心理テストには「投影法」と呼ばれる種類のものがあります。どのようにも解釈できる絵を見せて、何に見えるかを答えさせ、結果を分析していく方法です。

大学時代、長年、臨床現場におられた教授は、「投影法の中で語られる空想をバカにしてはいけない。空想は人間の経験(テレビや本など2次元を含めて)を超えることはない。空想で語られた中身にこそ、支援のヒントがある。」と何度もおっしゃっていたことを思い出しました。

 

子どもたちが話してくれることを丁寧に聞き取る姿勢を大切にしていきたいと思います。

秋の夜長に思うこと 〜療育の先にあるものは?〜

秋の訪れを感じる夜、久々に壁面製作をしてみました。

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幼稚園には、主任先生が素敵な秋の壁面を飾ってくれたので、支援センターに持って行こうと思います。◯◯ちゃんや△△ちゃんは、気づいてくれるかな?

 

もう何年も前に参加した研修会で、こんなお話がありました。

子どもたちが生活するのは、幼稚園や保育園、学校や地域社会であり、療育センターではありません。

今、考えると当たり前の話ですが、当時はいじめや不登校問題が教育界をにぎわせていました。その対応として文科省スクールカウンセラーを導入し、いわゆる「心の専門家」がカウンセリング室で活躍し始めた時期です。
私自身を振り返っても、その頃はカウンセリング室内での支援を中心に考えており、(守秘義務という縛りもありますが)あまり外部との連携には積極的でなかったような気がします。

しかし、療育の最終地点は、療育センターの中で「できる活動を増やす」ことではありません。子どもたちが生活する本来の場所(保育園・幼稚園・学校・地域社会など)で自立し、楽しく生活できるようになることが療育本来の目的です。

現に、少人数で個別にかかわる療育センターでは、普段の生活で苦手なこと(集中して話を聞く、製作活動をする、トラブルなく遊ぶなど)が「できる」子どもたちもいます。でも、実際の生活の場で子どもたちが楽しく過ごせるためには何が必要なのか・・・。
今日も先生たちと一緒に考え続けています。

 

とかくこの世は住みにくい ②

台風の季節が続いています。

こんな時は体調を崩したり、物ごとが停滞したり、普段なら気にならないような些細なことに心が騒いだり・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身もさすがに、不摂生な生活が続いていることを反省し、少し前からグリーンスムージーを始めました。

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葉物野菜と生フルーツってどんな味?と少々不安でしたが、意外と普通に飲めるので、最近ではいろいろなフレーバーを開拓することが楽しみになりました。

さらにあのミキサーの回転を見ていると、悩みや嫌なこと自体がミキシングされていくような気がして、ストレス解消になります(笑)。  

f:id:ashikatan:20161006002506j:plain今話題になっている某ブログの方には叱られるかもしれませんが、誰しも生きているのがしんどいなあと思うときがあります。特に相手(親、夫婦、子ども、友人、ご近所さん、嫁姑、職場の人、恋人など)があることは、自分ではどうしようもありません。今のように気候が悪いと、もやもやイライラにダブルパンチで、心身ともに不調をきたす人がいても不思議ではないのです。

ストレス解消の方法は人によって異なりますが、

「辛いこと、いやなこと、煩わしい日常をミキサーでスムージーにしよう大作戦!」

健康にもよいこの方法、おすすめです。

迷い

以前から感じていた違和感は、この赤の財布が原因では?と思い始めたのは数日前。
本来、黒、紺、茶が基本で、チェック柄とリボンがトレンドの私にとって、今使っている財布は違う!という結論に至り、思い切って買い替えることにしました。

お店に入って気づいたのは、今の季節・・・。
昔から春に財布を買うと「財布が張る(はる)」、秋に買うと「財布が空き(あき)」と言われています。縁起をかつぐわけではありませんが、迷っていたその時、間髪入れず聞こえてきたのはコマーシャルのアナウンス、「秋はお財布購入のチャンスです。「実りの秋」にちなんでお金がしっかり貯まります 云々・・・」

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確かこのお店、春に来たときは「春はお財布購入の季節です・・・」と言っていたような気がしますが(笑)。


事の真相はよくわかりませんが、どちらともとれるようなことに関して、どちらに決めるのか、結局は本人に委ねられています。難しいのはどちらを選択しても後にならないと、自分の選択が正しかったかどうかはわからないということ。
財布の購入くらいならまだしも、まだはっきりと「障害」という名がつかない幼い子どもに「療育」を受けさせるか否か、よく見られる下記の2つの意見に対して、その選択は難しいと思います。

 「子どもの問題(障害)は早期に発見して、早期に療育することで軽減されます。」


「あまりに早すぎる問題(障害)の診断は、子どもへのレッテル貼りでしかありません。子どもの発達を信じて様子をみましょう。」

立場的には前者の姿勢を取りつつも、私自身、完全に後者の意見を否定する勇気はありません。だからこそせめて、勇気を出して療育センターの門を叩いてくれた保護者や子どもたちを、笑顔で迎え、できることを一緒に考えていく、一緒に悩み、一緒に喜ぶ姿勢だけは大切にしたいと思う今日この頃です。

 追伸

ちなみに秋に購入した私の財布、今のところ「実り」はないようです。やっぱり、「秋」は「空く」のかなあ(泣)。

とかくこの世は住みにくい…

保育者養成校の学生さんが就職シーズンを迎えています。またまたよくある質問は、

「先生、どこの園が良いの?」

逆に聞きたい!「『良い』って何が?」

でも保育業界に就職を希望する学生さんは、だいたいどこも同じような待遇(給料、休暇、多忙さなど)であることは知っています。その時点で「こんな業界は無理!」という方は、そもそも保育現場への就職は考えません。
だから彼らが「どこの園が良い?」と聞くときの「良い」は9割ほどは「人間関係」のことを指しています。

そう言えば、最近、Facebookの広告の一部にこんなものがよく掲載されていますが、ご存じでしょうか?

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わざわざキャッチフレーズにするくらいですから、求職者にとって、職場選びの条件として人間関係の良し悪しは大きなウェイトを占めているのだと思われます。しかし人間関係良好の園があるとして、どうやって「厳選」するのか、機会があれば聞いてみたいなあ(笑)。

支援センターで3歳児の子どもたちがブロック遊びをしたときのことです。ひたすら高くしたい子、くるくる回る観覧車が作りたかった子、工事現場の車両にしたい子・・・。みんなの思いはそれぞれで、限られた数のブロックをめぐって、時には強い口調も飛び出します。

f:id:ashikatan:20160919232556j:plain「Aちゃんがままごと行ったらいい!」と言うB。

Aちゃんはふらりとままごとコーナーに移動しました。

次にCはAちゃんの作ったものを自分の作品にくっつけました。
「Cちゃん、ずるい!」と怒るB。
それからも人が入ったり出て行ったり・・・ブロック遊びの人間関係はどんどん複雑化していきます。

子どもの世界でも人間関係は複雑です。
「あの人さえいなければ!」と思う人がいる・・・。
でもその「あの人」がいなくなっても、また別の人が目障りになってくるのはよくある話です。

その逃げることができない「関係」の中で、どうやって折り合いをつけるのか・・・。多分、紀元前の昔から人類が抱えている永遠のテーマです。