今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

秋の夜長に思うこと② 〜「障害」は「個性」!?〜

「皆さま、この飛行機はまもなく東京国際空港羽田に着陸いたします。シートベルトを今一度・・・」

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何度、このアナウンスを聞いたかなあと思いつつ、ようやく目を開けます。
飛行機が苦手な私にとって1時間のフライトは苦行以外の何物でもなく、ましてや気流の関係で揺れた日には顔面蒼白・・・。

 出張が続く時期はさすがに辛く、かかりつけ医に相談したこともありました。私についた病名は「加速度病」。単なる乗り物酔いですが、医師曰く、乗り物に酔う人は、生まれつき三半規管が弱く揺れに対するバランスがとりにくい特性をもつので、根本的な治療法はない、酔い止めを飲む、新幹線など他の乗り物を利用する、周囲の理解が得られるなら、出張は誰かに代わってもらうなど、自分なりに工夫してみてくださいとのことでした。
生まれつきの特性、治療法なし、環境調整、周囲の理解、自分なりの工夫・・・、私が飛行機に乗るために必要な対応策は、発達障害の人が生活しやすくするための対応策と全く同じのようです。

障害は「個性」という意見があります。もちろん、人間にそれぞれ個性があることは事実ですが、残念ながらひとり一人の「個性」に合わせてくれるほど、現代社会は優しくありません。
例えば幼稚園は法律上、1学級1担任(場合により副担任を置く)、園児数は1学級35人以下となっています。実際は園の采配で、1クラスの人数は20名前後のことが多いのですが、国の基準では35人までであれば、担任は1人でもよいということになっています。
そのため、その中で生活する子どもには、一定の時間は指定された場所で過ごす、担任の指示に従える、言葉で友達とコミュニケーションをとれるなど、ある程度の社会的スキルが求められます(平岩幹男)。

そのような子どもを理解し、受け入れる社会づくりは大切です。しかし、酔うから揺らすなという要望をJ◯LやAN◯に申し入れても、実現するまでは長い時間がかかるのと同様に、社会はすぐには変われません。

だからこそ、支援センターでは、子どものもつ特性(多動、衝動性、不注意、社会的スキルの不足など)を受けとめつつ、それが生活上の「障害」にならないように、日々、療育支援を続けています。

 

ちなみに私も今では、長年の経験から、「加速度病」の苦痛から逃れるために必要なことは、あらゆるもの(耳栓、アイマスク、薬、ひざかけ、などなど)を駆使して、視覚と聴覚の遮断する、背もたれから離れて揺れの感覚を遮る、睡眠状態を保つということがコツだと知りました。それでも、フライト前には祈ります。

お願い、どうか揺れないで!