今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

遠い日

昔々あるところに・・・。
花ちゃん(仮名)という14歳の女の子がいました。
彼女はおとなしく、恥ずかしがりやでしたが、小さな動物が大好きな優しい子でした。
しかし、当時の学校は荒れる子どもたちを押さえつける(いや、指導する)ため、管理教育が横行しており、今とはかなり違う雰囲気がありました。

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花ちゃんが学校に来られなくなった原因は、わかりません。
おそらくいろいろな要因が絡み合い、登校自体が苦しかったのでしょう。
しばらくして花ちゃんは、教室ではなく、教育センターにある適応指導教室に通うようになりました。

担任の先生は、頻繁に教育センターを訪れ、花ちゃんとお話ししたり、自分の科目については補修を行っていたようです。そして、花ちゃんに会った翌日には、ホームルームで花ちゃんの様子について、クラスの子どもたちに伝えていました。
最初は、熱心に話を聞いていた子どもたちですが、長い間、顔を見せない級友に対する関心も薄れていくようでした。

そんな中、花ちゃんとはそれほどかかわりがなかったはずのSちゃんは、担任の先生が花ちゃんの話をしてくれるのを楽しみにしていました。それは、花ちゃんが体験した「箱庭療法」の話を聞いたからです。

箱庭療法とは、砂の入った箱の中に、人、動植物、乗り物、建物などのミニチュアを置き、何かを表現したり遊んだりすることを通して行う心理療法です。
担任の先生の話によると、花ちゃんは、こんこんとわき出でる泉の周りに、うさぎややぎなどのかわいい小動物を並べていました。そして、少し離れたところに、1匹のライオンを置いたそうです。
適応指導教室の担当者の見解としては、「小動物は花ちゃんの優しい心の表れ。そして、ライオンは何かの恐怖、いつかは戦わなければならない心の葛藤かもしれない。」とのことでした。

当時14歳のSちゃんに解釈はできません。しかし花ちゃんの作った不思議なジオラマ(箱庭)をいつか作ってみたいなあと思うようになりました。

時は流れ・・・。
先日、Sちゃんは箱庭療法の研修に行きました。以前から、箱庭療法に携わる機会はありましたが、最近になり、もう一度、勉強してみようと思ったようです。
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これはその時に製作した箱庭の一部です。
出来上がったとき、どこかで見た箱庭だなあとSちゃんは思いました。思い出すのに、随分と時間がかかりましたが、これははるか昔に聞いた花ちゃんが作った箱庭とそっくりだったのです。

花ちゃん、今はどうしているのかなあ・・・。