今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

盗んだバイクで走り・・・出さない!?

 あるショットバーでの話。近戸類(こんど・るい:40歳男性、ちょっとダンディーな今で言うチョイワル系?)と島馬男(しま・うまお:21歳、さわやか系の今で言う草食系男児?)は、来週末に迫った「集会」についてミーティングをしていました。

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  「なあ島。もう少しメンバー、集められないか?」

 「無理っすね。土曜の夜はバイト、入っている奴が多くて・・・。」

(近戸、ちょっと、キレ気味・・・)

 「伝統ある情可悪(ジョーカーと読むらしい)の集会とどっちが大事なんだ!?」

 「近戸さん、時代が違いますよ。何があっても『走り優先』って、昭和の話。」

(近戸、やや悲しそうにため息)

 「まあいいや。それで、揃いのツナギはできたか?」

 「ツナギ!?ああ、あのダッサイ特攻服のこと?『夜露死苦(よろしく)』とか『咲かせて見せます○○・・・』って書いた?」

 「ダ、ださい???」

 「あんな昭和の遺物なんか・・。通気性悪いし、窮屈だし、そのくせバカ高い刺繍代かかるし。」

 「おまえ、情可悪の頭だろ?もっとチームを・・・」

(近戸が言い終わる前に・・・)

 「だいたい情可悪かなんか知らないけど、うちのチーム、そんな名前はないし、オレ、リーダーじゃないっす。走りたいやつが走りたいときに集まって走る。チーム名つけて集まったり、あんな運動会の学級旗もどきのチーム名入りの旗振りかざしたりしたら、警察に目つけられるし・・・。」

 「はああ?????」

 「あっ、次の集会の件ですけど、SNSありますから大丈夫です。これで呼びかけたら走りたいやつ、集まるはずですから(ニコッとしたさわやかスマイル)。」

 

 数日後、同じショットバーで近戸は、伊谷氏益(いやし・ます:35歳、現在はサラリーマン)とグラスを傾けていました。

 「近戸さん、聞きましたよ。島とかなり派手にやりあったらしいじゃないですか。」

 「情報、早いな。あんまりふざけたこと言うから、ちょっと強めの言っただけさ。」

 「島のやつ、近戸さんに言われたこと、Twitterでつぶやいたもんだから(笑)」

 「あいつ、バカか!?」

 「まあ、いわゆるゆとり世代ですからね・・・。」

(近戸、グラスを左右に振り、ウイスキーと氷を混ぜながら)

 「なあ、伊谷氏・・・。時代が変わるってこういうことなのかなあ。」

 「どうなんでしょう・・・。ただ確実に時間は流れています。2004年に道交法(道路交通法)が改正されたでしょ。あれから族への締め付けはぐっと厳しくなった。不況でバイクも手に入れにくくなったし、そもそも最近は走ることどころか、車に魅力を感じない若い者も増えています。」

 「オレの青春は、とにかく大切なものは『仲間』だった。チームの先輩はおっかない存在だったけど、何があっても守ってくれたし、親や学校の教師にはわかってもらえなくてもチームの中では受け入れてもらえた。自分が頭になったときは、同じように後輩を守ってきたつもりだ。」

 「最近は、親も教師も物分かりいいんですよ。人権、人権ってやたらうるさいし、体罰なんて加えようものなら、たちまち通報されたり、教育委員会がさわいだりしはじめますからね。今の若いのは、そういう意味では恵まれていて、仲間だのチームの連帯感だのは重視しない。チームの厳しい上下関係に耐えることや、チームの掟にしばられることは、島の世代にはなじまないんじゃないですかね。」

 何も言えない近戸を見ないように、伊谷氏はグラスの中身を飲み干しました。そして独り言のようにつぶやきます。

 「まあ、それとは引き換えに、オレらの時代にあった大切な何か・・・はなくしてしまったかもしれませんが・・・」 

 to be continued・・・