今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

うさぎさんの祈り

「今日はこんなおいしそうなくるみがなる木を見つけたぞ!早くおうちに帰って、くるみチョコを作ろう!」大きなくるみを抱えたリスの坊やは、帰路を急ぎます。
そこへいじわるなオオカミがやってきました。
「おい、そのくるみがなっている木にオレ様を案内しろ!」
「えっ!?いやだよ・・・。ぼくがせっかく一生懸命、見つけたのに・・・。」
「うるさい!オレ様の言うとおりにするんだ!そしてお前は二度とその木に近づくな!」
森でも暴れ者のオオカミに逆らったら、どんなひどい目にあわされるかしれません。リスの坊やは泣く泣く、オオカミを今日見つけたくるみの木の場所に連れて行きました。

しょんぼりと歩いているリスの坊やとは別の道を、キツネの娘さんが歩いていました。
あら、その目は涙で真っ赤・・・。
「大好きだったタヌキくん、クリスマスはポンポコランドでメリーゴーランドに乗ろうねって約束したのに、私じゃなくてポコちゃんと一緒に行くのね・・・。どうして私じゃなかったの?」
どうやら1年以上おつきあいしていたタヌキくんに、新しい彼女ができたみたいです。あきらめきれない思いを抱きしめて、キツネの娘さんはとぼとぼと歩き続けます。

キツネの娘さんが「なぜ?」という問いを繰り返している頃、シカのおじさんは怒りが治まらない様子です。何年も何年も準備してきた企画を応募したのですが、落選。シカおじさんの企画はほぼ100%の確率で採用されると言われていました。しかし審査員長が体調を崩し、代わりに就任した審査員長はシカおじさんとは対極的な考えの人でしたので、そのことが影響したのかもしれません。
「がんばろうががんばるまいが、結局は一瞬の『運』が物事を決めるんだなあ。」
そう思うとシカおじさんは生きているのも面倒になってきました。

リスの坊やキツネの娘さんシカおじさんが失意のまま眠りにつくのを、空のお月様と、そこでもちつきをしていたうさぎさんが見守っていました。

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「こんばんはお月様。」
「やあこんばんは、うさぎさん。」
リスの坊やキツネの娘さんシカおじさんはまだ気づいていないようですね。」
「そうだね。リスの坊やは今日のくるみよりもっとおいしい実がなる木を見つけるし、キツネの娘さんはコン太くんと出会う。いつかシカおじさんは今以上に、大きな企画を成功させるだろう。結局、今日、彼らが手放したものは、未来に手に入るものに比べたら本当に小さくて不要なものなのさ。」

「早くみんなが気づくといいなあ」つぶやくうさぎさんでした。

一寸先は…

カウンセリングの中では、見えない未来への不安が多く語られます。なるようにしかならないと割り切っても、どこかに残っている不安は、ふとした折に頭をよぎり、時には、ぐるぐるとマイナス思考の連鎖に陥ることがあるのではないでしょうか。

ある方が、そうなったら気分を変えてみると言うので、私も一服…。

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下手な心理士よりも、ココアカウンセラーの方が役に立つかもしれません。

 

 

耳ざわりの良い言葉?

私は保育士養成校の講義において、毎回、メモに質問や要望、感想を書いてもらう時間を設けています。
その日のテーマについての感想や疑問に思ったことを書く学生が多いのですが、時には就職や自分自身についての相談を記す人もいるので、丁寧に目を通し、できるだけ回答するようにしています。

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先日の単元は「保護者対応」
ベテランの先生たちでも肝を冷やすほど難しいのに、数か月前まで高校生だった学生にどのくらい伝わるのかわかりませんが、一応、セオリー通りの内容を講義しました。
その後、1本のDVD(難病を抱え、保護者同伴登園をしている幼稚園児がテーマ)を視聴させ、「自分のクラスにこの子どもがいた場合、担任として、どのように保護者にかかわるか?」という内容でメモを書いてもらいました。

目を通すと・・・。
「1日でも保護者同伴しなくてよい方法がないか考える」というものもありましたが「母親に寄り添う」、「母親の気持ちを受け入れる」、「できるだけ話を聞く」、「母親の小さな変化を見逃さない」といった保育者の姿勢に関するものが大半で、自分で教えておきながら言うのもおかしいのですが、きれいな言葉で結論づけられているものが多い気がしました。

その中で一人の学生はこのように書いていました。
お母さんの悩みを聞き、問題があれば一緒に解決する。でも何をしてあげるべきなのかわかりません。話を聞くだけなら誰でもできるけど、解決の方法はわかりません。

心理・福祉・教育保育といった業界人は、「受容」、「共感」、「寄り添い」といった耳ざわりの良い言葉が大好きです。もちろん対人援助において「そんなこと自分で考えなさい」ではなく、一緒に考え寄り添う姿勢は大切ですが、それだけでは解決できない保護者の悩みや課題があることは、心に留めておく必要があると思います。

フレー!フレー!ど・ん・ぐ・り!

幼稚園も支援センターも、この季節は秋の実がいっぱいです。

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どんぐりころころ どんぶりこ~♫の歌が聞こえるのもこの時期です。
お池にはまってさあ大変!
その後ドジョウが出てきて遊んでくれたのでにっこり。
しかし時間が経つにつれて、おうちが恋しくなり泣き出す・・・
というストーリーを歌詞とするこの歌。
うちの幼稚園では、この続きをこんな風に歌っています。

どんぐりころころ泣いてたら

やさしいハトさん とんできて
やままでおくって くれました

どんぐりおれいを いいました

しかし自然の摂理的に考えて、「お池にはまってさあ大変!」のどんぐりは、他にもたくさんいるはずです。大半が自宅に帰ることができないまま、「置かれた場所」で過ごすことにならざるを得ないどんぐりたちですから、やさしいハトの目に留まったこのどんぐりは、本当に「運」がよかったのかもしれません。でも帰れたと思ったのも束の間、ある日強風にあおられて、今度はとなりの森へ飛ばされ、そこにはやさしいハトさんどころか、遊んでくれるどじょうもいない、まさに天涯孤独な場所だったかもしれないのです。

努力も大切ですが、時勢やその時の運?にかなわない時があります。
またたとえ願いが叶っても、そこからいばらの道が続くこともある・・・。
そんなどんぐりたちを案じつつ、エールをおくる台風の夜です。

 

私にとってはよくないの!

先日、ある本を買ったら、ペラペラで汚れやすく折れやすい表紙でした。折り目や汚れがつくと読む気をなくすと思ったので、図書館の本のようにビニールでコーティングしてみました。しかしうまく貼れず、特に端のビニールがかなり余った状態でくっついてしまい、仕方なくハサミではみ出した部分をチョキチョキ・・・。
すると、今度はそこがギザギザになり、買い直した方がいいかも?と思うほど、どんよりした気分になりました。

その時、ふと思い出したのが「私にとってはよくないの!」が口癖のももちゃん(仮名)のことです。彼女にはいろいろなこだわりがあるのですが、周囲の人に「同じことばかり言わないで!」、「もう終わったことでしょ?」という態度をとられ、わかってもらえないというイラ立ちと悲しみで、気持ちがふさいでしまうという、生きづらさを抱えていました。
正直、かかわることが難しいと感じたこともありましたが、今回のどんよりした気分を通して、あらためて人間には「他者にとってどうでもよいことだけど、自分にとってどうでもよくないこと」があることに気づかされました。

そうそう、その本の後日談ですが・・・。
(それなりの値段だったということは、さておき)地球のごみを増やさないために、買い直しはあきらめ、ギザギザになった端の部分をマスキングテープで補強してみました。

無事、目を通す気になり、めでたし、めでたし!

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