今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

耳ざわりの良い言葉?

私は保育士養成校の講義において、毎回、メモに質問や要望、感想を書いてもらう時間を設けています。
その日のテーマについての感想や疑問に思ったことを書く学生が多いのですが、時には就職や自分自身についての相談を記す人もいるので、丁寧に目を通し、できるだけ回答するようにしています。

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先日の単元は「保護者対応」
ベテランの先生たちでも肝を冷やすほど難しいのに、数か月前まで高校生だった学生にどのくらい伝わるのかわかりませんが、一応、セオリー通りの内容を講義しました。
その後、1本のDVD(難病を抱え、保護者同伴登園をしている幼稚園児がテーマ)を視聴させ、「自分のクラスにこの子どもがいた場合、担任として、どのように保護者にかかわるか?」という内容でメモを書いてもらいました。

目を通すと・・・。
「1日でも保護者同伴しなくてよい方法がないか考える」というものもありましたが「母親に寄り添う」、「母親の気持ちを受け入れる」、「できるだけ話を聞く」、「母親の小さな変化を見逃さない」といった保育者の姿勢に関するものが大半で、自分で教えておきながら言うのもおかしいのですが、きれいな言葉で結論づけられているものが多い気がしました。

その中で一人の学生はこのように書いていました。
お母さんの悩みを聞き、問題があれば一緒に解決する。でも何をしてあげるべきなのかわかりません。話を聞くだけなら誰でもできるけど、解決の方法はわかりません。

心理・福祉・教育保育といった業界人は、「受容」、「共感」、「寄り添い」といった耳ざわりの良い言葉が大好きです。もちろん対人援助において「そんなこと自分で考えなさい」ではなく、一緒に考え寄り添う姿勢は大切ですが、それだけでは解決できない保護者の悩みや課題があることは、心に留めておく必要があると思います。

フレー!フレー!ど・ん・ぐ・り!

幼稚園も支援センターも、この季節は秋の実がいっぱいです。

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どんぐりころころ どんぶりこ~♫の歌が聞こえるのもこの時期です。
お池にはまってさあ大変!
その後ドジョウが出てきて遊んでくれたのでにっこり。
しかし時間が経つにつれて、おうちが恋しくなり泣き出す・・・
というストーリーを歌詞とするこの歌。
うちの幼稚園では、この続きをこんな風に歌っています。

どんぐりころころ泣いてたら

やさしいハトさん とんできて
やままでおくって くれました

どんぐりおれいを いいました

しかし自然の摂理的に考えて、「お池にはまってさあ大変!」のどんぐりは、他にもたくさんいるはずです。大半が自宅に帰ることができないまま、「置かれた場所」で過ごすことにならざるを得ないどんぐりたちですから、やさしいハトの目に留まったこのどんぐりは、本当に「運」がよかったのかもしれません。でも帰れたと思ったのも束の間、ある日強風にあおられて、今度はとなりの森へ飛ばされ、そこにはやさしいハトさんどころか、遊んでくれるどじょうもいない、まさに天涯孤独な場所だったかもしれないのです。

努力も大切ですが、時勢やその時の運?にかなわない時があります。
またたとえ願いが叶っても、そこからいばらの道が続くこともある・・・。
そんなどんぐりたちを案じつつ、エールをおくる台風の夜です。

 

私にとってはよくないの!

先日、ある本を買ったら、ペラペラで汚れやすく折れやすい表紙でした。折り目や汚れがつくと読む気をなくすと思ったので、図書館の本のようにビニールでコーティングしてみました。しかしうまく貼れず、特に端のビニールがかなり余った状態でくっついてしまい、仕方なくハサミではみ出した部分をチョキチョキ・・・。
すると、今度はそこがギザギザになり、買い直した方がいいかも?と思うほど、どんよりした気分になりました。

その時、ふと思い出したのが「私にとってはよくないの!」が口癖のももちゃん(仮名)のことです。彼女にはいろいろなこだわりがあるのですが、周囲の人に「同じことばかり言わないで!」、「もう終わったことでしょ?」という態度をとられ、わかってもらえないというイラ立ちと悲しみで、気持ちがふさいでしまうという、生きづらさを抱えていました。
正直、かかわることが難しいと感じたこともありましたが、今回のどんよりした気分を通して、あらためて人間には「他者にとってどうでもよいことだけど、自分にとってどうでもよくないこと」があることに気づかされました。

そうそう、その本の後日談ですが・・・。
(それなりの値段だったということは、さておき)地球のごみを増やさないために、買い直しはあきらめ、ギザギザになった端の部分をマスキングテープで補強してみました。

無事、目を通す気になり、めでたし、めでたし!

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メッセージをお願いします。

「赤いのはよく見かけるけど、白いのは珍しいから、植え替えとくで~。」と幼稚園の技師の方が園庭に移してくれました。

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彼岸花はお彼岸の頃に咲き、昔は墓場付近でよく見られたことに関連するのか、「再会」や「また会う日まで」といった花言葉があるそうです。

生きる時間に比例して「別れ」の回数は増えていきます。この世を離れていった人、(意図するか否かは別として)いつの間にか会えなくなった人・・・。

もしも願いが叶うなら、今一度、会いたい人は誰ですか?
もしも願いが叶ったら、伝えたいことは何ですか?

彼岸に咲いた夏の花

国民の祝日に関する法律によると、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」。
暑い寒いと不満をこぼす度、「寒さ暑さも彼岸まで」と諭してくれていた亡き祖父母の墓にそっと手を合わせると、真っ赤な彼岸花の横に、季節外れのひまわりが咲いていました。

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猛暑に咲くひまわりは、迷いなく太陽を見つめて大きな大輪の花を開かせます。
それに比べて、お彼岸に咲くひまわりは、自分の季節が終わることを知りつつ、最後の力をこめて花を開かせる「はかなさと強さ」を持っているように見えました。

迷いなく進む力と自分の置かれた状況を受け止める力、生きていく上ではどちらも必要な気がします。