今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

エビデンスのその先は?②

前回はエビデンスの重要性について、書きました。しかし残念なことに、どれだけ研究されて導かれたエビデンスでも、世の中に絶対とか永遠はありません

 

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年末の時期、つい片付けの手を休めて、本を読んでいます。これは、今から20年くらい前に発売されたものですが、私の臨床への意識を大きく変化させてくれた大切な書籍です。

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あの頃、なるほど!と感じさせられる内容で、私自身、参考にすることが多かったのですが、久々に読むと「あれ⁉︎」と感じる部分が多く、少し戸惑いました。 

著者は大学の先生(多数は心理士)方々で、事例に上がってきている症例は、不登校」や「いじめ」、「ストレス」や「職場での不適応」が大半です。

当時それらは「心の問題」として扱われていましたが、今であれば、良し悪しは別として、間違いなく「発達障害」としての対応がなされる症例が多い気がしました。

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「心の専門家」として心理士が注目を集め、少子化に悩む大学が臨床バブルと揶揄されるほど、競い合って心理学科を作りはじめた頃からはや20年。

しばらくすると「心の問題」の背景には「発達障害(脳の機能不全)」が潜むと言われ始め、カウンセリング、絵画・箱庭療法、性格(人格)検査よりも発達相談、発達検査を重点的に取り扱う大学も出始めたと聞きます。

例えば以前は自閉症が「親の育て方」が原因で起こると信じられていました。今、そんなことを主張する専門家はいないと思いますが、このように、時代とともに「心」や「発達」におけるエビデンス(化学的根拠)も変わるかもしれない…ことは常に意識しておかなくてはと感じた読書時間でした。

 

 

エビデンスのその先は?

ネット上で静かな話題になっているカライドサイクル(折り紙の万華鏡)を作りました。

くるくると形が変わるおもしろいおもちゃです。年明けに支援センターデビュー予定です。

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ユニット折り紙は、一つひとつのパーツは単純な作りですが、組み立てになると説明図も作り方動画もアテにならないことが多い(私が読み取れないだけ?>_<)。

特に複雑な作品は折り目が多く、折る位置さえわからなくなる…。しかし、パーツさえ基本に忠実にしっかり折っておくとここが一番大切!)、後は「タイミング」の問題で、気づいたらできていた!というのが正直な感想です。

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今はエビデンス(証拠、根拠)という言葉を聞くことが多くなり、医療も療育や教育も科学的根拠に基づいて行うことが主流です。

例えば「集団療育」の名の下に、子どもたちを好きなように遊ばせるだけ…というやり方には私も疑問を感じています。

子どもを集団で過ごさせたら自然にできることが増えるというのは大きな間違いです。

集団の中で伸びていくのは子どものどのような能力で、それはなぜなのか、集団で伸びにくいのはどの部分か、そもそも集団で過ごすにはどのような前提条件があるのか、ということを把握し、保護者と一緒に考えていかなければ、専門的な療育はできません。

エビデンスに基づいた療育の先に、何かのふとした「タイミング」で見せてくれる子どもたちの「奇跡」がある…そんなことを考える午後のひとときです。

 

追伸  

ただいま、カライドサイクルの最難関(花火)に挑戦中です。

よかったらご一緒に^_^。

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追記

完成しました!

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セブンラック

毎日、寒い日が続いております。その後、いかがお過ごしでしょうか。

今日は一足早いクリスマスプレゼントを送っていただき、ありがとうございました。

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私は昔、ある人に「この世の中は科学で解明できないことがあるんですね。」と言ったことがあります。するとその人は笑いながらこうおっしゃいました。

科学で解明できることの方が少ない」と。

 

7色のバラ、セブンラックは奇跡を起こすと聞いたことがあります。どちらかと言えば、合理的な私ですが、科学では解明できない奇跡を信じてみる気になれるほど、心のこもったすてきな贈り物でした。

幼稚園や支援センターの子どもたちにもぜひ、見せてあげようと思います。

 

またお会いする日が楽しみです。その時まで、どうぞお元気で。

傷ついた心を癒すには…

毎日、給食は幼稚園の3歳児クラスで食べます。

今日のお昼はハンバーグ!子どもたちの笑顔もひとしおでした。

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しかしここ数日、心身ともに万全ではない私。自分のお皿には少しだけしか盛り付けませんでした。いただきます!のあと、それを見たAちゃんは「せんせい、おなか痛い?」周りの子も、「食べないと元気になれないよ!」、「せんせい、Yちゃんが結婚してあげるから、元気になって!」などなど(笑)。

 

大学時代「人間関係論」の授業の中で、今の自分は幸せか否かという小論を書かされたことがありました。はっきりした記憶はないのですが、多分、辛いことがあったのでしょう。幸せだとは書きませんでした。後でその教授がおっしゃるには、クラスで2人だけ、自分は不幸だと書いた人がいるとのことでした。その瞬間、目が合ったのは私の親友(笑)。

 

人は辛いとき、どうやってそれを癒すのでしょう。薬もお酒もタバコもやけ食いもカラオケも、一瞬はそのさびしさを紛らわせてくれます。

しかし傷ついた自分を気にとめてくれる人の存在ほど、支えになるものはないような気がします。

今日も私は、周囲の方々に感謝です。

もしも私が少子化対策大臣だったら…

あるSNSで見かけた、

以下の発言を禁止し、罰則を設けます!

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若く産んだら、早すぎる。

老けて産んだら、遅すぎる。

一人で産んだら、父親は?

多く産んだら、やっていけるの?

一人っ子なら、一人だけ?

産まなかったら、かわいそう。

                                    

つなげてみたら…

療育でハサミを使うことがよくあります。

支援センターでお預かりしている子どもは、その特性上、手先が不器用であったり、目と手を協応させるのが難しいことがあります。

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ハサミ指導は、幼稚園や保育園の補講的な意味もありますが、実はそれ以上に療育的効果が期待できるのです。

 

ハサミを使った活動では、手先の微細運動をはじめ、目でしっかりと切る線を追う、集中力、注意力など、さまざまなことが経験できますが、私は何より「自制心」の育ちに期待しています。特に下のような星を切るときは、刃を大きく広げすぎたり、勢いがよすぎたりすると星は完成しません。

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「小さいお口(ハサミの開閉)、先まできたら止まります、次はおなか(ハサミ刃の真ん中)で…」とお話ししながら子どもが切り抜いたものをせっかくなので、キラキラテープに貼ってみました!

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療育では「〜できるようになる」という、目に見える発達を期待しがちです。けれども、必要なときに必要な力加減や我慢ができる…という内面の育ちも同じくらい大切だという当たり前のことを、忘れずにいたいと思います。

教師にだけはなりません!?③

今日は心理検査の話をしたいと思います。f:id:ashikatan:20161204231050j:image

 以前、教師にだけはならないと決意したSちゃんについて書きました。

  

ashikatan.hatenablog.com

  

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 しかし彼女には、教育界でぜひとも解明しなければならないことがあったのです。

 そのひとつは、彼女が8歳(小学2年生)のときに初めて体験した不思議なお絵描きの謎。

当時、彼女のクラスで担任の先生のシールセットがなくなる事件がありました。今と違い、いろいろなシールが手に入らなかった時代。担任の先生が何かのときに貼ってくれるかわいいシールは、子どもたちの憧れでした。それがある日、箱ごとなくなったのです。

担任は、クラスの子どもたちに向かって、先生はあなたたちを信じているけれど、もし間違って持って帰った人がいたら、明日までに先生に申し出るか、そっと返してくださいと言いました。そして、もし、明日までにシールが返ってこなかったら、

 「先生は嘘を見抜くテストをします。」

と話し、その日は下校時間になったのです。

帰り道、子どもたちはシールの行方についての話題で持ちきりでした。中には◯◯さんが怪しいといった噂もありましたが、Sちゃんの頭の中は、嘘を見抜くテストのことでいっぱい・・・。世の中にそんな素晴らしいものが存在するなら、見てみたい!明日の朝、シールが戻っていませんようにと、不謹慎なことを考えていました。 

そして翌朝、Sちゃんの祈りが届いたのか、シールは戻ってきていませんでした。担任の先生は約束どおり、嘘を見抜くテストをすることになり、子どもたちに1枚の紙を配ったのです。そして、「1本の実のなる木を描きなさい。」と言いました。これがSちゃんが臨床心理学でいうところの心理アセスメント(心理検査)に出会った瞬間でした。    

… to  be  continued