今日、希望のタネを蒔きました

療育現場の所長日記です。

悩みながらできること

よく考えてみます…

検討してみます…

 

こんな答えの後で、誰かに相談してみることは大切です。けれども、最後の答えは自分で出さなければならない時があります。そんなときは、頭と一緒に手を動かすことで、煮詰まりを防ぎ、客観的に考えるきっかけができるかもしれません。

クリスマスが近いこの季節、身近な素材でプレゼントボックスを作ってみませんか?

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箱作りは簡単に見えていろいろなことを教えてくれます。まず、一つひとつのプロセスを丁寧にこなすこと、間違えに気づいたらすぐにやり直すこと、組み合わせの瞬間も手を抜かないこと…などなど。もしプロセスが正しければ、誰が折っても素敵な立体が出来上がります。

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箱作りのプロセスは、何かに似ているのです。

 

煮込み料理の季節です

数年前、Facebookでこんな記事を見つけました。

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「いいね」の数が多く、感動しました!とか、よい作物を実らせるためにがんばります…と言ったコメントが多かったことを記憶しています。

しかし、悪い作物を実らせようと思ってタネを蒔く人はいません。その時々で一番の選択や行動をしても、それが正しいか否かは、時間が経たないとわからないことも多い気がします。

ちなみにひねくれ者の私が書いたコメントは…

どんな作物ができたって、まとめて煮込んで食べてやる!

意外やそのコメントへの反響があり、驚いたことを覚えています。

 

正しい選択をすることは大切です。でもそれと同時に、その結果を受け止める強さも必要なのではないか…そんなことを感じる雨上がりの午後です。

 

いづこも同じ…

寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば
いづこも同じ 秋の夕暮れ

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心疲れた日、いろいろなことを考えていると、
百人一首の中にある良暹法師のこの和歌を思い出すことがあります。

「あまりのさびしさに耐えかねて、家を出て、あたりを眺めてみると どこも同じように、さびしい秋の夕暮れだなあ・・・・」
という意味の句です。

この問題さえなくなれば・・・
あの人さえわかってくれたら・・・
〇〇にさえ行けたら・・・
など、桃源郷を夢見るのは人間の常です。でも案外、どこに行こうとも同じような悩みはあり、変わらない日常が続いているのかもしれません。

 

明日はステキな笑顔に逢えますように。

ドーナツはいかがですか? 〜手作り教材〜

療育で使う教具は、市販のものもありますが、子どもたちの課題は個々で異なりますので、手作りすることがあります。

先日、100円ショップで見つけた「ドーナツバランスゲーム」。ドーナツが崩れないように台に乗せていくという、単純なものですが、珍しく、いいことを思いついたので3セット購入しました。まずは、準備…。f:id:ashikatan:20161103211156j:image

8種類のドーナツを正しい位置に入れたり、カードの上に並べて数対応をしたり、お友達とお店やさんごっこをしたりもできます。

300円のおもちゃも少し手を加えると、視覚認知、微細運動、集中力、数対応、視覚や聴覚の情報処理、社会スキルなどの課題に対応する教具に変身するのです。

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 興味のある方は、ぜひ見学に来てくださいね。

 

 

秋の夜長に思うこと② 〜「障害」は「個性」!?〜

「皆さま、この飛行機はまもなく東京国際空港羽田に着陸いたします。シートベルトを今一度・・・」

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何度、このアナウンスを聞いたかなあと思いつつ、ようやく目を開けます。
飛行機が苦手な私にとって1時間のフライトは苦行以外の何物でもなく、ましてや気流の関係で揺れた日には顔面蒼白・・・。

 出張が続く時期はさすがに辛く、かかりつけ医に相談したこともありました。私についた病名は「加速度病」。単なる乗り物酔いですが、医師曰く、乗り物に酔う人は、生まれつき三半規管が弱く揺れに対するバランスがとりにくい特性をもつので、根本的な治療法はない、酔い止めを飲む、新幹線など他の乗り物を利用する、周囲の理解が得られるなら、出張は誰かに代わってもらうなど、自分なりに工夫してみてくださいとのことでした。
生まれつきの特性、治療法なし、環境調整、周囲の理解、自分なりの工夫・・・、私が飛行機に乗るために必要な対応策は、発達障害の人が生活しやすくするための対応策と全く同じのようです。

障害は「個性」という意見があります。もちろん、人間にそれぞれ個性があることは事実ですが、残念ながらひとり一人の「個性」に合わせてくれるほど、現代社会は優しくありません。
例えば幼稚園は法律上、1学級1担任(場合により副担任を置く)、園児数は1学級35人以下となっています。実際は園の采配で、1クラスの人数は20名前後のことが多いのですが、国の基準では35人までであれば、担任は1人でもよいということになっています。
そのため、その中で生活する子どもには、一定の時間は指定された場所で過ごす、担任の指示に従える、言葉で友達とコミュニケーションをとれるなど、ある程度の社会的スキルが求められます(平岩幹男)。

そのような子どもを理解し、受け入れる社会づくりは大切です。しかし、酔うから揺らすなという要望をJ◯LやAN◯に申し入れても、実現するまでは長い時間がかかるのと同様に、社会はすぐには変われません。

だからこそ、支援センターでは、子どものもつ特性(多動、衝動性、不注意、社会的スキルの不足など)を受けとめつつ、それが生活上の「障害」にならないように、日々、療育支援を続けています。

 

ちなみに私も今では、長年の経験から、「加速度病」の苦痛から逃れるために必要なことは、あらゆるもの(耳栓、アイマスク、薬、ひざかけ、などなど)を駆使して、視覚と聴覚の遮断する、背もたれから離れて揺れの感覚を遮る、睡眠状態を保つということがコツだと知りました。それでも、フライト前には祈ります。

お願い、どうか揺れないで!

 

 

 

 

子どもの「空想」が教えてくれること

当支援センターの療育では、

・語彙を増やす。

・助詞の活用を学ぶ。

・記憶力や推察力を高める。

・登場人物の気持ちを考えることを通して、

   他者の視点を理解する。

ことなどを目的に、昔話カードを使うことがあります。

 

子どもと一緒に絵本を読み、そのテーマに合った童謡を歌い、最後に絵カードをストーリー順に並べさせるという内容で、集中して話を聞く訓練にもなる楽しい課題です。

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ある子どもが私にこんなことを聞きました。

「なんで、かぐやひめは月に帰ったの?」

私が「なんでだと思う?」と聞き返すと、

「あのね、お母さんとお父さんが怒るから!」

 

心理テストには「投影法」と呼ばれる種類のものがあります。どのようにも解釈できる絵を見せて、何に見えるかを答えさせ、結果を分析していく方法です。

大学時代、長年、臨床現場におられた教授は、「投影法の中で語られる空想をバカにしてはいけない。空想は人間の経験(テレビや本など2次元を含めて)を超えることはない。空想で語られた中身にこそ、支援のヒントがある。」と何度もおっしゃっていたことを思い出しました。

 

子どもたちが話してくれることを丁寧に聞き取る姿勢を大切にしていきたいと思います。

秋の夜長に思うこと 〜療育の先にあるものは?〜

秋の訪れを感じる夜、久々に壁面製作をしてみました。

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幼稚園には、主任先生が素敵な秋の壁面を飾ってくれたので、支援センターに持って行こうと思います。◯◯ちゃんや△△ちゃんは、気づいてくれるかな?

 

もう何年も前に参加した研修会で、こんなお話がありました。

子どもたちが生活するのは、幼稚園や保育園、学校や地域社会であり、療育センターではありません。

今、考えると当たり前の話ですが、当時はいじめや不登校問題が教育界をにぎわせていました。その対応として文科省スクールカウンセラーを導入し、いわゆる「心の専門家」がカウンセリング室で活躍し始めた時期です。
私自身を振り返っても、その頃はカウンセリング室内での支援を中心に考えており、(守秘義務という縛りもありますが)あまり外部との連携には積極的でなかったような気がします。

しかし、療育の最終地点は、療育センターの中で「できる活動を増やす」ことではありません。子どもたちが生活する本来の場所(保育園・幼稚園・学校・地域社会など)で自立し、楽しく生活できるようになることが療育本来の目的です。

現に、少人数で個別にかかわる療育センターでは、普段の生活で苦手なこと(集中して話を聞く、製作活動をする、トラブルなく遊ぶなど)が「できる」子どもたちもいます。でも、実際の生活の場で子どもたちが楽しく過ごせるためには何が必要なのか・・・。
今日も先生たちと一緒に考え続けています。